スルガ銀行の不正融資問題と集団訴訟(銀行も不動産屋もお客も悪いと思う)

2022年8月12日

不動産、または不動産業界に特に興味ない人にとっては
「スルガ銀行」
という名前を出しても
「何それ?」
となるかと思います。
実際にお客さんとお話ししているときに話の流れで
「スルガ銀行の不正融資の問題が数年前にあったのご存じですか?」
と私が聞く時があるのですが
「???」
という顔される顔が何度もありました。

ただ時々ですがこの話に興味持ってくれる方もいらっしゃいます。
なので少しこの話題について書いていこうと思います。

まず私事ではありますが、以前は不動産投資の仲介営業をやってる時期がありました。
もう15年ぐらい前です。
その頃からですがスルガ銀行は有名でした。
というのも融資してくれるんです。
他の都市銀、地銀、信用金庫などでローン打診しても
「無理です」
と言われる案件をスルガ銀行は全部といいませんが、かなり融資してくれる金融機関でした。

不動産屋からすると
「困ったときのスルガ」
という愛称でした。
お客さんがどうしても物件欲しがってる。
でもローンは普通の金融機関なら組めない。
ただ金利は高いがスルガ銀行ならローン組める。
(当時で変動金利4.5%でした)

お客さんによっては良い金融機関だったんです。
他の金融機関全部打診してもどこもローン組んでくれない。
スルガ銀行ならローン組んでくれる。

時代は過ぎ、3,4年前でしたかね。
「シェアハウス問題」
というのが社会問題になりました。
ざっくり書くと
不動産屋がシェアハウス建築する

建築したシェアハウスを個人のお客さんに売る

通常だとローン組めないのだがスルガ銀行が入ることでローン組めるようになる

という流れです。
詳しく書くと色々あるのですが、大きなポイントは
「スルガ銀行と不動産屋がぐるになって預金通帳などの改ざんをしてローン組めるようにした」
「不動産会社が、家賃保証、という言葉を使いリスクなく儲かるように宣伝した」
という点だと思います。

確か問題になったときは
「家賃保証されてる家賃が振り込まれなくなってローンが払えない」
というのがスタートだった気がします。

シェアハウスは少し不動産投資の勉強をするとわかるのですが
「非常にリスクある不動産投資」
なんです。
というのも、銀行は
「部屋(レジデンス)」
を見ます。
わかりやすく言うと
「ワンルーム、1K、1DK、2DK、2LDK、3LDK」
などの表示がある部屋は
「収益が安定して見込める」
という判断になるんです。

シェアハウスの場合は極端に言えば
「部屋として見られない」
という判断にされるんです。
銀行からすれば
「すぐ出ていくでしょ」
「安定しないでしょ」
「1部屋に住んでないでしょ」
という判断です。
そうすると
「融資取り扱い不可物件」
になります。
もっとわかりやすく言えば
「ほとんどの金融機関がローン貸してくれない、買いたい人がいてもローン組めないから売りたいときに売れなくなる」
となるんです。
資産価値が低い商品なんですね。

当時ニュース見てて思ったのは、購入した人に対して
「欲につられたんだろうな」
と思いました。
おそらくですが不動産屋が
「ローンもスルガ銀行なら自己資金無くても組める」
「家賃保証されるので、購入した後は毎月??万円が口座に振り込まれる」
という営業してたんだと思います。

ただこの後しばらくして急展開になりました。
「シェアハウスを購入した人のスルガ銀行の債務がなくなる」
というニュース見たときは
「まじか?」
と思いました。

不動産投資で
「ノンりコース」
という専門用語があります。
これは
「不動産投資失敗しても個人のお客さんは破産しない」
ような契約です。
「それと同じようなことしてるな」
と思いました。

そして少し前に何気なくスマホ見てると
「スルガ銀行に集団訴訟」
というニュースを見ました。
記事見てみると
「スルガ銀行でアパート、マンション購入した人が数百人集団訴訟してる」
というニュースです。
正直な気持ちですが
「それはどうなの?」
という気持ちになりました。

今は住宅メインの不動産仲介をやっています。
先ほど書いたように不動産投資の仲介を数年やってる時期もありました。
かなり多くの不動産投資家を話したことはあります。

率直な意見ですが
「狡猾」
なんです。
不動産投資をする人は。
不動産営業がお客さんを批判するような意見書いてはいけないのですが、当時私はそう思いました。
(その結果その業界離れた理由の一つでもあります)

青臭いこと書きますが
「人間性」
って大事だと思うんです。
人の対する礼儀であったり、相手が辛そうだったりしたらいたわる気持ちなど・・・
不動産投資する方が全員こういうケースではありませんが、割合として狡猾な人は多かったです。
一言でいえば
「人間との関係よりお金を優先する」
ような感覚です。

営業長年やっていて怖いのは
「言う事が突然変わる人」
はとても怖いです。
あと
「約束したことを平気で破る人」
です。

普通の会話の時は別におかしくはないんです。
でも何かの拍子に突然豹変する。
営業目線ではありますが、こういう客と接して精神がへとへとになって営業やめていく人間も多いんです。

そして不動産投資やる人は基本
「頭良い人」
が多いです、
勉強家でもあります。
セミナー行く人も多いですし、本など色々読んで勉強してる人もほとんどです。

その上で
「スルガ銀行でアパート、マンション購入した人が数百人集団訴訟してる」
というニュース見ました。
正直な感想言います。
「それ嘘でしょ」
と。

実際に不動産のアパート、マンションを購入する流れ書きます。
大体のケースが
「楽待」
などのポータルサイトを見てそこから不動産会社に問い合わせます。
または
「不動産投資セミナー」
などの不動産会社が主催しているセミナーに行ったりもします。
そこで不動産仲介の営業との接点ができます。

不動産営業相手にアンケートなどを記入して属性(勤め先)や年収、自己資金などを伝え相談します。
その時に不動産営業は
「この人ならローン組める」
「この人はローン組めない」
と判断します。
ローン組める人相手ならそこから
「追客(客を追っていくこと、不動産業界用語です)」
が始まります。

不動産営業は新しく出てくる物件の中で
「ローンを組める物件」
をひたすら探します。
これは
「積算法」(路線価や建物価格から算出)
「収益還元法」(利益を生み出せる立地なのかどうかの計算、人気エリアだと評価出る)
という言葉があるのですが、銀行から見て
「評価出る物件」
だとローン組めるんです。
仮にですが1億円の売買価格で、銀行評価が1億1000万円の評価出れば
「フルローン、またはオーバーローン」
で自己資金少しでも1億超える物件買えます。

ただこういうのは
「例外」
なんです。
不動産投資の基本は
「2割は頭金入れましょう」
が基本です。
1億の物件なら諸経費合わせて2500万円くらい必要になります。
また
「耐用年数」
という言葉もあり、木造は22年、軽量鉄骨は27年、重量鉄骨は34年、鉄筋コンクリートは47年という基準もあります。
この基準に当てはめると木造の22年経過した物件は耐用年数過ぎてるのでローン組めないんです。
都市銀はこの耐用年数に当てはめることが多いので、木造のアパートはローン組めない事が多いです。

今書いた内容は不動産投資少し勉強すればわかる内容です。
レバレッジ(てこの原理)と同じくらい基本的な知識です。

感覚的なものですが
「年収1000万前後、自己資金500万円ぐらい」
の人が不動産投資する人多いです。
本業で1000万超えてるので皆さん頭いいですし、リスクについてもわかってます。
危ないこととかも見抜ける人たちです。

そういう人たちがスルガ銀行でローン組んでるんです。
ローンの仕組み上
「属性(勤め先)」
はとても重要なので年収ある人でないと基本ローンが組めません。

購入するまでの流れはおそらくですが
不動産営業が客に連絡

客が食いつく

営業が「ローンやってみましょう」と言う

不動産会社、または客の家でスルガ銀行のローン書類を記入

営業が会社に持ち帰り、銀行に提出する際に預貯金などを偽造

スルガ銀行はその書類を元にローンの稟議を上に上げる

ローン通る

引き渡し

という流れが多いかと思います。

長くやってる不動産屋、銀行員なら
「ローン書類の偽造」
については皆知ってるんです。
ちょくちょくあるんです。
「あの不動産会社がローン書類偽造して銀行取引停止になった」
という話は。
現場からすると皆知ってる話です。
(ちなみに当社はやってませんよ笑)

ただこういうケースはほぼ間違いなく
「不動産会社主導」
でやってるんです。
銀行は知らなかったので
「善意の第3者」
という立場になります。
なので悪いのは不動産会社だけです。

今回のスルガ銀行だけかなり特殊なんです。
おそらくニュース見た人からすれが
「スルガ銀行が主導で悪いこと全部やってる」
と見えると思います。
現場からすればどうかんがえても
「不動産営業、不動産会社主導でローンの偽造をやってる」
んですね。

ローンの入り口で接客するのは不動産営業なんです。
いきなりスルガ銀行に行く人はほぼいませんし、物件が決まってない場合だと銀行の担当者は基本
「欲しい物件決まったらまた連絡ください」
になります。

話をまた戻します。
今回スルガ銀行に対して集団訴訟しています。
全員不動産投資家です。
今回のニュースがあった後に知り合いから話しまわってきたのですが
「スルガ銀行にローンの無効をお願いしたが断られた、その結果破産しそうな人がいる」
という話を聞きました。
内容聞くとある中古1棟マンションをスルガ銀行でローン組んで購入した。
購入した後は取引した不動産会社が家賃保証してくれる契約。
1年経過する前に不動産会社から
「もう家賃保証できない」
と言われる。
毎月数十万円の赤字。
どうしようもないので売ろうしたが、実際の売却価格は購入した金額よりも数千万以上安くなる。
自己資金もそこまで持ってない。

知り合いの営業は
「もうどうしようもない」
と言っていました。
もうこの後も必死に払い続けるか、任意売却するか、破産するしか方法がないんです。
不動産投資におけるリスクでもあります。

でも今回はもう一つだけ道があるんです。
それが
「スルガ銀行のせいにすればいい」
という道が。

購入を手配したのも銀行のローンで不正を主導したのもメインは
「不動産会社」
のはずです。
ただ不動産会社を訴えてもお金にならないケースが多いです。
倒産してる可能性もありますし、裁判で立証するには
「不動産会社が偽造した証拠」
を提出しなくてはいけない。
その上府不動産会社の立場からすれば、訴えてきた人の味方するはずもありません。
「私たちは知らない」
と裁判でいう可能性高いと思います。

弁護士のところに行ったんだと思います。
その結果
「取れるところから取ろう」
となったんだと思います。
スルガ銀行はなんだかんだで巨大な組織です。
あまり知られてないかと思いますがシェアハウス問題が出る前は
「地銀の雄」
と言われたんです。
利益幅や融資額が大きい地銀でもありました。

そして
「事実」
ですよね。
今回はシャアハウスの人たちに対して
「ローン払わなくてもいい」
という前代未聞の対応しました。
そしたらスルガ銀行で融資受けていて毎月赤字になって破産しそうな人たちは思います。
「訴えればローン払わなくてもいいんじゃないのか?」
と。

ニュースの記事見てて思うのは
「銀行が勝手にやった。
自分は知らなかった」
と書いてるニュース見るたびに
「・・・・・・・」
と思います。
億超える物件買う人は年収高い人たちです。
理詰め得意な人たちですし、危なそうなことかわかる人たちです。
でないと本業でそこまでの年収には届かないと思います。

100%とは言いませんが100人いたら95人以上は
「自分のローンは偽造したことでローン組めた」
と知ってる人たちだと思うんです。
なぜなら不動産会社の営業がこっそり教えてるかと思いますし、セミナーやネットの記事とかで調べてるはずです。
そもそも
「自己資金数十万、数百万でローン組めるのは何かおかしい」
と気が付くはずの人たちなんです。

弁護士の歩合も関係してると思います。
不動産会社を訴えて、仮に勝訴しても不動産会社にお金がない、または倒産してたら賠償金はもらえない。
着手金だけの案件になってしまいます。
それよりは
「スルガ銀行」
のほうがお金持ってる。
まだ余力はある。
なら
「集団で人数集めて訴えて勝訴して歩合多くもらおう」
と思ったことも大きい気がします。

最初のほうに書きましたが、不動産投資って
「狡猾だな」
と思うんです。
追いつめられると人って変わるんですね。
不動産の場合高額なので人の本性が出やすいんです。
「嘘つくことでローンの返済なくそう」
とやってるんだろうな・・・と正直思います。
でも
「それも人の本来の姿でもあるな・・・」
とも思いなんか複雑な気分です。

このスルガ銀行のケースですが、悪いのは
「スルガ銀行、不動産会社、不動産会社の営業、お客」
だと思います。
皆悪いんです笑。
まともにやってる不動産屋ならこんな事態には巻き込まれないですし、欲張ると何かしらマイナスなことはおきます。

「投資は自己責任」
という言葉があります。
このケースは
「その言葉からかけ離れてるな・・・」
とよく思います。
私も少額ではありますが不動産投資、FX、株はやってました。
(向いてないのでやめちゃいましたが笑)
やってるときは
「自己責任だな」
と心から思いましたしね。

長々と書きましたが、本題はここなからなんです。
お客さん次第ではありますが、当社に売却のお問い合わせ頂いたお客さんに対しては裏で
「変な不動産会社、変な買主」
をブロックするようにしてるんです。

嘘ばっかりつく不動産会社の営業もいますし、見もしないでとりあえず購入申込書を送ってきて、3日後には
「やめます」
といきなり言ってくる買主や不動産会社の営業。
あと
「買主=神様」
見たい思ってる方も時々いらっしゃいます。
「不具合があったら一生売主が全部責任負ってくれるんですよね」
とか言ってくる客もいるんです。
(しかもちゃんと瑕疵担保責任とかの説明した後に)

我々なりにですが、こういうのを裏でチェックしてるんです。
「危ない匂い」
ってやっぱりあるんです。
こういう嗅覚がないと不動産売買営業はやっていけないんです。

そもそもですが
「御社が1番怪しい」
と思われたら全部意味ないですけどね笑。
我々が怪しいと思われたらそれはもう
「力不足で申し訳ありません」
としか言えないです。

当社に問い合わせ頂いて売却の依頼いただいた方には、お客さんの見てないところで
「怪しい人」
「トラブル起こしそうな人」
は上手く避けるようにしてます。
今まで書いてませんでしたが、これは昔からずっとやってるんです。

悪いやり方は知っていないといけない業界でもあります。
でないと我々が騙されることがお客さんへの被害にも繋がってしまうからです。
「悪いやり方は知ってないといけない、でも人としてやっていけないことはやらない」
と決めて長年仕事してます。

スルガ銀行の集団訴訟は最高裁まで揉めそうな雰囲気です。
10年ぐらいかかるみたいですね。
地裁、高裁などの判決が出る時にニュース出ると思います。
その時に記事見てなんか溜息出そうな気がします。

このHPにも時々書いてますが
「素直に伝えてください」
と書いてます。
長年この不動産売買をやっていますが、嘘ついたり隠したりしてるケースがその後すごい揉めたりする業界です。
正々堂々とやると矛盾はなくなるんです。
その結果
「良い不動産取引」
になるケースがほとんどです。

こういうニュース見て
「ちゃんとやんなきゃな」
と改めて思いました。
長い文章読んでいただいた方ありがとうございました。

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