専任媒介の囲い込み、見分け方
専任媒介契約における「囲い込み」は、売主の利益を大きく損なう深刻な問題です。不動産会社が自社の利益(両手仲介手数料)を優先するあまり、他社からの正当な買主の紹介を拒絶する行為を指します。
本稿では、囲い込みの仕組みから、その巧妙な手口、売主が見分けるための10のチェックポイント、そして発覚した際の具体的な対処法を解説します。
1. 囲い込みの基礎知識と売主のデメリット
囲い込みとは何か?
不動産売却を不動産会社に依頼する際、「専任媒介契約」または「専属専任媒介契約」を結ぶと、その不動産会社は物件情報を「レインズ(不動産流通標準情報システム)」という業界専用のデータベースに登録する義務が生じます。
本来、レインズに登録された物件情報は、全国のあらゆる不動産会社(仲介会社)が閲覧でき、それぞれの会社が抱える買主候補に紹介できるようになります。これにより、市場全体で広く買主を募り、より高く、より早く売却できる可能性が高まります。
しかし、「囲い込み」とは、媒介契約を結んだ不動産会社(元付業者:もとづけぎょうしゃ)が、他社(客付業者:きゃくづけぎょうしゃ)から「お宅の物件を買いたいというお客様がいます。内見(ないけん)させてください」と問い合わせがあっても、「すでに商談中です」「契約予定です」などと嘘をついて断る行為を指します。
物件情報を自社の中だけに閉じ込め、他社に触れさせないようにすることから「囲い込み」と呼ばれます。
なぜ不動産会社は囲い込みをするのか?「両手取引」の経済学
不動産会社が囲い込みを行う理由は、ひとえに「両手取引(りょうてとりひき)」による仲介手数料の倍増を狙うためです。
不動産仲介における手数料の仕組みには、「片手取引」と「両手取引」があります。
片手取引(共同仲介)
-
- 仕組み: 売主と買主に別々の不動産会社がつく形です。
- 売主側の仲介会社(元付): 売主からのみ仲介手数料(物件価格の3%+6万円+消費税など)をもらいます。
- 買主側の仲介会社(客付): 買主からのみ仲介手数料をもらいます。
両手取引
-
- 仕組み: 1社の不動産会社が、売主と買主の両方の仲介を担当する形です。
- 不動産会社: 売主と買主の双方から同時に仲介手数料を受け取ることができます。つまり、売上が「2倍」になります。
4,000万円の物件を片手取引で仲介した場合、手数料の上限は約138万円(税込)です。しかし、両手取引に成功すれば、その2倍の約276万円(税込)が1回の取引で会社の利益になります。
不動産会社にとって、両手取引は非常に魅力的なビジネスモデルです。そのため、他社が連れてきた買主(片手取引になる)を意図的に排除し、自社で買主を見つけるまで物件を隠し持とうとする動機(インセンティブ)が強く働いてしまうのです。
専任媒介・専属専任媒介で発生しやすい理由
媒介契約には3つの種類があります。
-
- 一般媒介契約: 複数の不動産会社に同時に売却を依頼できる。レインズへの登録義務はない(任意)。
- 専任媒介契約: 1社にのみ依頼できる。レインズへの登録義務(7日以内)がある。売主自身が見つけた買主(親戚など)と直接契約できる。
- 専属専任媒介契約: 1社にのみ依頼できる。レインズへの登録義務(5日以内)がある。売主自身が見つけた買主であっても、必ずその不動産会社を通さなければならない。
囲い込みが多発するのは、「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」です。
一般媒介契約の場合、売主がA社、B社、C社と同時に契約できるため、A社が物件を囲い込もうとしても、B社やC社が先に市場で売却してしまう可能性があります。そのため、一般媒介で囲い込みを行うメリットは不動産会社にありません。
しかし、専任・専属専任媒介契約では、売主はその1社を信じて任せるしかありません。不動産会社側から見れば、「契約期間中(最長3ヶ月)、この物件をコントロールできるのは自社だけ」という独占状態になります。この独占状態を悪用して、両手取引を狙うための囲い込みが行われるのです。
囲い込みが売主に与える4大損害
囲い込みは、不動産会社にとっては利益倍増のチャンスですが、売主にとっては百害あって一利なしの行為です。具体的には以下の4つの大損害を被ることになります。
① 売却価格が安くなる(機会損失と不当な値下げ)
他社から「満額(売り出し価格通り)で買いたい」という買主が現れても、不動産会社はそれを拒絶します。その後、自社で買主を見つけようとしますが、なかなか見つからない場合、不動産会社は売主に対して「反響が少ないので、価格を200万円下げましょう」などと提案してきます。
売主は「市場の反応がないなら仕方ない」と諦めて値下げに応じますが、実際には他社からの高値の買い希望を握りつぶされていただけであり、不当に安い価格で売却させられることになります。
売主は「市場の反応がないなら仕方ない」と諦めて値下げに応じますが、実際には他社からの高値の買い希望を握りつぶされていただけであり、不当に安い価格で売却させられることになります。
② 売却期間が長期化する
広く市場全体から買主を探せば1ヶ月で売れたかもしれない物件が、特定の1社だけの顧客名簿や狭い広告範囲内で探すため、買主が見つかるまでに3ヶ月、半年と時間がかかります。住み替えの計画が狂ったり、無駄な維持費(固定資産税や管理費)が発生し続けたりします。
③ 買主の選択肢が狭まる(属性の悪化)
他社が紹介する買主の中には、「現金で一括購入できる人」や「ローンの事前審査が完全に通っている人」など、確実性の高い優良な買主が含まれている可能性があります。しかし、囲い込みをされると、自社で見つけてきた「ローンが通るか怪しい買主」や「大幅な値引きを要求してくる買主」との交渉を無理に進めざるを得なくなるケースがあります。
④ 「売り止め」による物件のイメージ低下
市場に長く残り続けている物件は、ポータルサイト(SUUMOやHOME’Sなど)をチェックしている一般の買主や他社の営業マンから、「この物件、ずっと売れ残っているな」「何か致命的な欠陥があるのではないか」と疑われるようになります。物件の鮮度が落ち、最終的に相場より大幅に安く買い叩かれる原因になります。
2. 囲い込みの巧妙な手口・手法
近年の囲い込みは、レインズの規定厳格化や法改正に伴い、非常に巧妙化・ステルス化しています。昔のように「他社には一切教えない」という単純な方法だけでなく、制度の抜け穴を突いた手口が横行しています。
手口①:物確(ぶっかく)に対する「嘘のステータス」回答
他社の営業マンが物件の有無を確認することを通称「物確(ぶっかく)」と呼びます。他社から電話やFAX、メールで問い合わせがあった際、元付業者は以下のような定型句を使って断ります。
-
- 「ちょうど今、別のお客様から買付証明書(購入申込書)が入ってしまい、商談中なんです」
- 「今週末に契約が予定されておりまして、ご紹介ができません」
- 「売主様のご都合で、今一時的に内見をストップしております」
- 「すでに住宅ローンの審査に入っている段階ですので、お断りしています」
- 「お話入ってます」
これらは一見、正当な理由に見えますが、実際には買付証明書など1枚も入っておらず、住宅ローンの審査も行われていない「真っ赤な嘘」であるケースが多々あります。
手口②:レインズのステータス悪用(商談中への偽装)
レインズには、物件の現在状況を示す「ステータス管理機能」があります。
-
- 公開中: 他社からの紹介が可能な状態。
- 書面による購入申込みあり: 買主から正式な書面で申し込みが入っている状態。
- 売主都合による一時紹介停止: 売主の事情で一時的に売り止めにしている状態。
囲い込みを行う不動産会社は、実際には申し込みが入っていないにもかかわらず、レインズ上のステータスを「書面による購入申込みあり」に変更します。こうすることで、他社からの問い合わせ自体をシステム的にブロックします。
さらに巧妙なケースでは、売主に無断で「売主都合による一時紹介停止」に設定し、他社から突っ込まれた際に「売主様が今、体調を崩されていて内見できないと言っている」などと言い訳の盾にする手法もあります。
さらに巧妙なケースでは、売主に無断で「売主都合による一時紹介停止」に設定し、他社から突っ込まれた際に「売主様が今、体調を崩されていて内見できないと言っている」などと言い訳の盾にする手法もあります。
手口③:他社への広告掲載(転載)の全面禁止
媒介契約を締結する際、多くの売主は「できるだけ多くのサイトに載せて広く宣伝してほしい」と願います。しかし、囲い込みを狙う会社は、他社から「御社の物件を、弊社のホームページやSUUMOに掲載させてほしい(広告転載の許可)」と言われても、すべて「不可(広告掲載NG)」と回答します。
他社が広告を出せるようになると、他社に買主が集まってしまい、自社が両手取引を達成できなくなるからです。元付業者は売主に対して、「あちこちの会社が同じ物件を載せると、売れ残りの安物物件に見えてイメージが落ちますよ」「弊社が責任を持って大手サイトに載せるので十分です」などと尤もらしい説明をして、他社の広告を制限します。
手口④:内見日時の意図的な引き延ばし・妨害
他社からの問い合わせを完全に断ると怪しまれるため、形だけ「紹介可能」と答えつつ、実質的に内見をさせない「嫌がらせ・引き延ばし」の手法です。
-
- 「今週は売主様の立ち合いが難しく、内見は再来週以降になります」
- 「鍵の手配に時間がかかるため、すぐにはご案内できません」
- 「担当者が今出張に出ておりまして、予定が組めるのが来週以降になります」
このように時間を引き延ばしている間に、自社で囲い込んでいる顧客や、自社の店舗に来店した一般客に物件を紹介し、「他社経由の買主が内見に来る前に、自社の顧客で契約を成立させる」という時間稼ぎを行います。
手口⑤:買取業者への転売(プロへの両手取引)
一般の個人買主を見つけるのが難しい、あるいは早期に確実に両手取引を成立させたい場合、一般市場への公開を形だけに留め、提携している「不動産買取業者(再生業者など)」に物件を持ち込む手口です。
買取業者はプロですので、相場の7割〜8割程度の価格でしか買い取りません。しかし、買取業者は購入後、リフォームして再販する際に、再びその不動産会社に仲介を任せてくれる(また両手取引ができる)という約束(バックマージンや専任返しの約束)をすることが多いのです。
不動産会社にとっては「買取時に対面で両手(1回目)」「再販時に対面で両手(2回目)」となり、合計4倍の手数料収入を得られるため、売主に「一般のお客様からは反響がないので、業者買取で早く現金化しましょう」と誘導し、大損をさせます。
不動産会社にとっては「買取時に対面で両手(1回目)」「再販時に対面で両手(2回目)」となり、合計4倍の手数料収入を得られるため、売主に「一般のお客様からは反響がないので、業者買取で早く現金化しましょう」と誘導し、大損をさせます。
3. 囲い込みを見分けるための10のチェックポイント
売主自身が「自分の物件が囲い込まれているのではないか?」と気づき、見分けるための具体的な手法とチェックポイントを10個、難易度やアプローチ別に解説します。
① レインズの「売主専用確認画面」のステータスをチェックする(必須)
専任媒介・専属専任媒介契約を結ぶと、不動産会社から「登録証明書」という書類が渡されます。この書類には、売主だけがアクセスできる「売主専用確認画面」のURL、ID、パスワードが記載されています。
チェック方法
パソコンやスマートフォンから売主専用画面にログインし、ご自身の物件の「ステータス(処理状況)」を確認してください。
-
- チェックポイント: まだ誰にも売る約束をしていない、内見もこれからという段階なのに、ステータスが「書面による購入申込みあり」や「売主都合による一時紹介停止」になっていないか。
- 見分け方: もし売主に心当たりがないのにこれらのステータスになっていれば、100%意図的な囲い込み(他社排除)が行われています。
② 別の不動産会社を装って「物件確認(物確)」の電話を入れてみる
最も確実で、言い逃れのできない証拠を掴む方法です。知人や信頼できる別の不動産会社(地元の小さな不動産屋など)に協力してもらい、媒介契約中の不動産会社に「一般の客付業者」のフリをして問い合わせをしてもらいます。
シミュレーション手順
-
- 協力者に、媒介契約中の会社(担当者または店舗)に電話をかけてもらう。
- セリフ:「宅建インフォメーションの〇〇と申します。レインズを拝見して、〇〇市〇〇の〇〇万円の中古マンション(一戸建て)についてお聞きしたいのですが、こちら現在ご紹介可能でしょうか?」と聞く。
- 囲い込みのサイン: 媒介契約中の会社が「あ、その物件は今商談中(契約予定)でして、ご紹介できません」と答えたらアウトです。
- その直後に、売主本人から担当者に「私の物件、今問い合わせとかありますか?」と通常通り電話を入れます。担当者が「いえ、今週はまだ具体的な反響はありませんね」などと答えた場合、完全な囲い込みの証拠(嘘の報告)が確定します。
③ 一般の「客」を装って自社サイトから問い合わせてみる
自分で、あるいは友人に頼んで、媒介契約中の不動産会社のホームページ(自社サイト)や、その会社が出しているポータルサイトの物件ページから、「一人の買い希望の客」として問い合わせ(メールや資料請求)をしてみます。
見分け方
-
- 健全な場合: 「はい、ご紹介可能です!ぜひ今週末に内見にいらっしゃいませんか?」と熱心に営業してきます。
- 囲い込み中(他社排除中)の場合: 一般客からの問い合わせに対しても同様に熱心に対応するはずです。もし、他社からの物確には「商談中」と断っているのに、一般客のあなたに対して「ご紹介可能です!」と言ってきた場合、「他社(片手)は断るが、自社の客(両手)なら案内する」という囲い込みが完全に証明されます。
④ レインズへの登録内容(図面・写真)が「登録枠だけ」になっていないか
不動産会社はレインズに物件を登録する際、間取り図(マイソクと呼ばれる販売図面)や外観・内装の写真を添付することができます。他社の営業マンは、この図面や写真を見て「これなら自社の顧客に紹介できる」と判断します。
見分け方
売主専用画面、または担当者から送られてくるレインズ登録控えを確認してください。
-
- チェックポイント: 物件の住所や価格などの文字情報は登録されているものの、「間取り図(PDF)」が添付されていない、あるいは写真が1枚も載っていない状態になっていないか。
- 意図: 不動産会社が「法律上、レインズに登録しなければならないから枠だけ作ったが、他社に具体的な情報を渡したくない(他社に客を見つけられたくない)」と考えている証拠です。情報が不十分な物件は、他社も顧客に紹介しにくいため、実質的な囲い込みになります。
⑤ 他社ポータルサイトや他社ホームページへの「広告転載」がすべて「不可」になっているか
レインズの物件詳細データには、他社がその物件を自社のWebサイトやSUUMO、アットホームなどに掲載して良いかどうかを決める「広告転載区分」という項目があります。
見分け方
売主専用画面などで、自分の物件の広告転載区分を確認してください。ここが「不可」または「全面不可」になっている場合、要注意です。
売主が「他社に広告を載せないでくれ」と明確に指示していない限り、広く売りたい売主にとって他社の広告掲載はメリットしかありません。それを一律で「不可」にしているのは、他社経由で買主が集まるのを防ぎ、自社の広告(自社HPや自社枠のSUUMO)だけで買主を囲い込もうとしている強力なサインです。
売主が「他社に広告を載せないでくれ」と明確に指示していない限り、広く売りたい売主にとって他社の広告掲載はメリットしかありません。それを一律で「不可」にしているのは、他社経由で買主が集まるのを防ぎ、自社の広告(自社HPや自社枠のSUUMO)だけで買主を囲い込もうとしている強力なサインです。
⑥ 週末(土日)の「内見予約」を不自然な理由で断られないか
売主がまだ居住中の状態で売り出している場合、不動産会社から内見の打診が入ります。囲い込みをされている場合、土日の書き入れ時であるにもかかわらず、内見の連絡が全く来ない、あるいは不自然に直前でキャンセルされることがあります。
見分け方
担当者から「今週、他社さんから内見希望があったんですが、売主様のご都合が悪いと先方に伝えておきました(あるいは、先方の都合が悪くなりました)」といった報告が不自然に続く場合です。
不動産会社が、他社からの内見希望を勝手に売主のせいにしたり、架空のキャンセルを捏造したりして、内見の機会を潰している可能性があります。売主自身が「いつでも内見ウェルカム」というスタンスを伝えているのに、週末に1組も内見が入らない状態が2〜3週間続く場合は、他社からの打診を裏で弾いている可能性が極めて高いです。
不動産会社が、他社からの内見希望を勝手に売主のせいにしたり、架空のキャンセルを捏造したりして、内見の機会を潰している可能性があります。売主自身が「いつでも内見ウェルカム」というスタンスを伝えているのに、週末に1組も内見が入らない状態が2〜3週間続く場合は、他社からの打診を裏で弾いている可能性が極めて高いです。
⑦ 業務報告書の内容が「極端に薄い」「定型文ばかり」ではないか
専任媒介契約では2週間に1回以上、専属専任媒介契約では1週間に1回以上、売主に対して書面またはメールで「業務の処理状況」を報告する義務(宅地建物取引業法第34条の2)があります。
見分け方
送られてくる報告書(業務報告書)の内容を精査してください。
-
- 不審な報告例:
-
- 「今週もネット広告からの反響はありませんでした。引き続き広告を継続します。」(これだけ)
- レインズのアクセス回数(他社が見た回数)が記載されていない。
- 「問い合わせ:0件」とだけ書かれており、他社からの「物確(物件確認電話)」が何件あったかの記載が一切ない。
-
- 解説: 優秀で誠実な会社は、「今週は他社から〇件の物件確認があり、そのうち〇件が内見を検討中でしたが、間取りの条件が合わず見送りとなりました。自社HPからは〇件のアクセスがありました」と、他社からのアプローチ状況も細かく報告します。他社からの動きを一切隠し、数字の「0」だけを並べる報告書は、囲い込みを隠蔽している典型例です。
- 不審な報告例:
⑧ 「周辺相場より明らかに安い買い取り」を早期から執拗に勧めてくるか
売り出してまだ1ヶ月目、あるいは媒介契約を結んで間もない段階であるにもかかわらず、担当者が「一般のお客様の動きが本当に悪いですね…」「このままだと売れ残って価値が落ちます」と過度に不安を煽り、「弊社と提携している買取業者なら、〇〇万円で即金で買ってくれますよ」と業者買取を強くプッシュしてくるケースです。
見分け方
一般市場に出せば適正価格で売れるポテンシャルがある物件(駅近、築浅など)なのに、不自然なほど早く「業者への売却」を勧めてくる場合、前述の「手口⑤:買取業者への転売(プロへの両手取引)」を狙った囲い込みプロセスの最終段階に入っている可能性があります。市場での反響を意図的に握りつぶし、売主を精神的に追い込んで安値で業者に売らせようとする悪質な手口です。
⑨ 近隣へのチラシ(ポスティング)やSUUMO掲載の「掲載エリア」が異常に狭い
不動産会社が「自社で買主を見つける(両手取引)」ことに固執している場合、物件情報の露出を意図的に制限します。広く全国や全域に情報が行き渡ると、他社の優秀な営業マンに見つかってしまうからです。
見分け方
-
- チェックポイント: 「SUUMOに載せました」と言いつつ、検索条件(キーワードや特定の絞り込み)をかなり細かく入れないと私達の物件がヒットしないような、おざなりな掲載の仕方をされていないか。
- チラシの確認: 「今週、チラシを5,000枚配りました」と報告があっても、その配布エリアが自社の店舗の目の前のブロックだけなど、極端に偏っていないか。
- 意図: 宣伝活動を「やっているポーズ」だけ売主に見せつけ、実際には他社や広域の買主に気づかれないようにローカルな範囲でだけ囲い込んでいる状態です。
⑩ 大手不動産会社だからと盲信している(会社の体質・ノルマの確認)
「名の知れた超大手不動産ブランドだから、囲い込みなんて不正はしないだろう」という思い込みは非常に危険です。実は、過去に週刊誌や報道で大々的に囲い込みをスクープされ、国土交通省などから是正指導を受けたのは、誰もが知る業界トップクラスの超大手不動産会社たちでした。
見分け方(環境的要因)
大手の営業マンには、毎月非常に厳しい「両手仲介のノルマ」や「手数料売上目標」が課せられています。片手取引を3件成立させるよりも、囲い込んで両手取引を1件成立させた方が、社内の評価が高く、インセンティブ(歩合給)も多くなる仕組みになっている会社が少なくありません。
担当者が「私は会社の看板を背負っていますから!」と強調しつつも、具体的な他社への情報公開に消極的な姿勢(「他社に任せるとトラブルになりますよ」などと言う)を見せる場合、組織的な囲い込み体質に染まっている可能性があります。
担当者が「私は会社の看板を背負っていますから!」と強調しつつも、具体的な他社への情報公開に消極的な姿勢(「他社に任せるとトラブルになりますよ」などと言う)を見せる場合、組織的な囲い込み体質に染まっている可能性があります。
4. 囲い込みが発覚した・疑わしい場合の「即効性のある対応策」
もし上記のチェックポイントで「囲い込まれている可能性が濃厚だ」と感じたら、売主は泣き寝入りしてはいけません。迅速かつ毅然とした態度で以下のステップを実践し、主導権を取り戻してください。
ステップ1:担当者に「カマ」をかけて証拠と反応を見る
まずは決定的な揉め事にする前に、担当者の嘘をあぶり出します。
-
- 実践セリフ:
「知り合いの不動産会社(または友人の宅建業者)に聞いたんですが、私の物件、レインズで『商談中』になってるって言われたんですけど、誰かから申し込み入ったんですか?」
「他社の営業マンから『お宅の物件、内見を断られた』って聞いたんですけど、どういうことですか?」
- 実践セリフ:
このように具体的に切り出します。もし囲い込みをしていれば、担当者は非常に狼狽し、「あ、それはシステムのエラーで…」「手違いでステータスが変わってしまって…」「ちょうどタッチの差で別のお問い合わせがありまして…」と言い訳を始めます。この反応を見るだけで、黒か白かがほぼ判別できます。
ステップ2:媒介契約の特約(変更)を要求する
媒介契約の残り期間があり、すぐに会社を変えるのが難しい場合は、契約内容の変更(覚書・特約の締結)を要求して、物理的に囲い込みができない環境を作ります。
-
- 要求する条件:
-
- 「他社への広告転載(SUUMO、HOME’S、レインズ等)の全面承諾・許可」を明確に書面で取り交わす。
- 「他社からの物確(物件確認)および内見依頼の履歴を、毎週の業務報告書に件数と会社名まですべて記載すること」を義務付ける。
-
- 要求する条件:
「広く売りたいので、他社さんにもどんどんSUUMOに載せてもらってください。もし他社からの掲載依頼を断ったら、その時点で媒介契約を解除します」とはっきりと伝えてください。まともな会社であれば、売主がここまで知識を持って自衛し始めると、囲い込みを諦めて真面目に他社へ情報を公開するようになります。
ステップ3:不動産会社の「コンプライアンス窓口」や上司に通報する
担当者レベルで話が拉致があかない、あるいは言い訳ばかりで信用できない場合は、その会社の「お客様相談室」「コンプライアンス遵守部門」または「店舗のセンター長(支店長)」に直接クレームを入れます。
-
- 伝える内容:
「担当の〇〇媒介において、他社からの正当な内見依頼を『商談中』と偽って拒絶する『囲い込み行為』が行われている疑いがあります。これは宅地建物取引業法における信義誠実の義務に違反する行為であり、御社のコンプライアンス体制を疑わざるを得ません。事実関係を調査し、本日中に支店長からご回答をいただけますか?」
- 伝える内容:
大手企業であればあるほど、公式なコンプライアンス窓口への「宅建業法違反(囲い込み)の指摘」を極度に恐れます。担当者が独断で行っていた場合、即座に担当者が変更されるか、会社の態度が180度変わって平謝りとなり、物件紹介が正常化します。
ステップ4:違約金なしで媒介契約を「即時解除」する
専任媒介契約の期間は原則3ヶ月であり、中途解約する場合、通常はそれまでにかかった広告費の実費などを請求される契約(標準媒介契約約款)になっています。しかし、不動産会社側に「囲い込み」という明確な契約違反(義務不履行・不信行為)がある場合、売主は違約金を1円も支払うことなく、媒介契約を即時解約することができます。
-
- 解除の手順:
-
- 囲い込みの証拠(他社が断られた時の音声録音や、レインズの不当なステータス画面の魚拓・スクリーンショット)を確保する。
- 不動産会社に対し、「宅地建物取引業法違反および媒介契約における善管注意義務違反(最善を尽くして売却活動を行う義務の不履行)に基づき、本媒介契約を直ちに解除します」という旨を記載した書面(内容証明郵便が最も効果的、難しければメールやFAX)を送付する。
- 不動産会社が「解約費用がかかる」と言ってきたら、「では、この囲い込みの証拠を持って、国土交通省(または都道府県の宅建業指導課)および宅地建物取引業協会に正式に通報・告発しますが、よろしいですね?」と伝えてください。
-
- 解除の手順:
5. 囲い込みを未然に防ぐ!契約前の5つの鉄則
売却活動をスタートさせる前(不動産会社を選ぶ・媒介契約を結ぶ段階)に、囲い込みの被害に遭わないための予防策を講じておくことが、最も賢い防衛術です。
① 一般媒介契約を選択する(最強の囲い込み対策)
囲い込みを物理的に100%不可能にする唯一の方法は、「一般媒介契約」を結ぶことです。
一般媒介契約であれば、A社、B社、C社というライバル関係にある複数社に同時に依頼するため、A社が物件を隠そうとしても、B社がSUUMOに載せて買主を見つけてしまえば、A社は1円の儲けにもなりません。そのため、各社は囲い込む余裕などなく、我先にと市場に情報をオープンにして買主を探す可能性があります。
一般媒介契約であれば、A社、B社、C社というライバル関係にある複数社に同時に依頼するため、A社が物件を隠そうとしても、B社がSUUMOに載せて買主を見つけてしまえば、A社は1円の儲けにもなりません。そのため、各社は囲い込む余裕などなく、我先にと市場に情報をオープンにして買主を探す可能性があります。
-
- 注意点: 一般媒介にすると、不動産会社側も「自社で売れるか分からない(他社に横取りされるかもしれない)」ため、広告費をふんだんに投入した積極的な販売活動や、手厚い売却サポート(ハウスクリーニング無料サービスなど)をしてくれなくなるデメリット(モチベーション低下)があります。
- 対策: 人気エリアのマンションや、状態が良くすぐに売れそうな物件であれば、一般媒介にしても複数社が競い合ってくれるため、非常に有効な選択肢となります。
② 契約書の特約に「囲い込み禁止・他社広告転載許可」を明記させる
どうしても専任媒介または専属専任媒介契約を結びたい場合(手厚いサポートを受けたい、窓口を1社に絞って楽に売却を進めたい場合など)は、契約を締結するその日に、標準の契約書だけでなく特約(備考欄への追記や覚書)を入れさせます。
-
- 契約書に書き込ませる具体的な文言:
「乙(不動産会社)は、甲(売主)の利益を最優先とし、本物件をレインズに登録した後は、他業者からの物件確認および内見依頼に対して正当な理由なく拒絶してはならない。また、他業者からの広告掲載(転載)の申し出があった場合、甲の利益に資するものとして原則すべて『承諾(可)』として処理するものとする。万一、乙による意図的な他社排除(囲い込み行為)が発覚した場合、甲は何らの催告を要せず、本契約を無条件で即時解除できるものとし、乙は甲に対し違約金や実費の請求を一切行えないものとする。」
- 契約書に書き込ませる具体的な文言:
この文言を提示して、「これを契約書に入れてください。拒否されるのであれば、御社とは専任媒介契約を結べません。他社に行きます」と伝えてください。囲い込みを前提にしている悪質な会社は、この時点で契約を諦めるか、一般媒介への変更を打診してきます。これによって悪質な会社を事前にフィルタリング(排除)できます。
③ 「両手取引」を原則禁止している、または「片手専門」の仲介会社を選ぶ
不動産業界の中には、ビジネスモデルとして「囲い込み撲滅」を掲げ、「当社は片手取引(売主側の仲介)に特化します。買主は全国の他社さんから広く募集します」と宣言している先進的な不動産会社(エージェント型の会社など)が存在します。
これらの会社は、自社で買主を探して両手取引を狙うことを最初から放棄している(または仕組み上しない)ため、囲い込みが発生するリスクがゼロです。レインズに100%綺麗な状態で登録し、間取り図も写真も完璧に載せ、他社からの内見依頼を1分1秒でも早く受け入れようと動いてくれます。こうした「売主の味方に徹してくれる会社」をパートナーに選ぶのが最も安全です。
④ 媒介契約の期間を「1ヶ月」など短期間に設定する
法律(宅建業法)では、専任・専属専任媒介契約の有効期間は「最長3ヶ月」と定められていますが、これはあくまで最長期間です。売主と不動産会社の合意があれば、「1ヶ月契約」や「2ヶ月契約」に設定することも完全に合法で可能です。
不動産会社に対して、「御社の実力を拝見したいので、まずは1ヶ月契約でお願いします。しっかりとしたオープンな販売活動をして反響をいただけるようであれば、来月更新します」と伝えます。
期間が1ヶ月しかないとなれば、不動産会社はのんびり囲い込んで自社の顧客を探している時間がありません。「他社からでも何でもいいから、とにかく1ヶ月以内に買主を連れてきて契約を成立させないと、他社に媒介を切り替えられてしまう」という健全な焦りが生まれ、必死に市場に物件を公開して売却活動に励むようになります。
期間が1ヶ月しかないとなれば、不動産会社はのんびり囲い込んで自社の顧客を探している時間がありません。「他社からでも何でもいいから、とにかく1ヶ月以内に買主を連れてきて契約を成立させないと、他社に媒介を切り替えられてしまう」という健全な焦りが生まれ、必死に市場に物件を公開して売却活動に励むようになります。
⑤ 査定時に「レインズの過去データ」や「成約事例」を細かく開示させる
最初の不動産会社選び(査定依頼)の段階で、売主自身の不動産リテラシー(知識レベル)の高さをアピールしておくことも抑止力になります。
査定書を持ってきた営業マンに対して、以下の質問を投げかけてみてください。
-
- 「御社で専任媒介を結んだ場合、過去の物件で片手取引と両手取引の比率はどのくらいですか?」
- 「レインズの売主専用画面のステータス管理機能について、私は毎週自分でログインしてチェックする予定ですが、登録は契約後何日目に行っていただけますか?」
- 「他社さんからのSUUMO掲載申請には、どのような基準で許可を出されていますか?」
これらの質問をサラッと言える売主に対して、営業マンは「この売主は業界の裏事情(囲い込みや両手取引の闇)を完全に知っている。下手な小細工(囲い込み)をしたら一発で見抜かれて大問題になるな」と警戒します。結果として、あなたの物件だけは絶対に囲い込まず、優良顧客として真面目にクリーンな取引を行わざるを得なくなります。
6. まとめ:不動産売却を成功させるために
専任媒介契約における囲い込みは、売主が一生に一度あるかないかの高額な資産売却において、数百万円単位の損失を与えかねない極めて悪質な行為です。
国や宅建協会もレインズのステータス管理システムを導入するなど対策を講じていますが、業者側の「両手手数料が欲しい」という執念と巧妙な言い訳(「今商談中」の嘘)の前に、未だに完全撲滅には至っていないのが現状です。
最高の防衛策は、「売主自身が正しい知識を持ち、システム(売主専用画面)を監視し、時には他社のフリをして確認するほどの当事者意識を持つこと」です。
不動産会社は「偉大なるパートナー」であるべきですが、全ての会社が誠実とは限りません。本稿で紹介した10の見分け方と対策を駆使し、あなたの人生の大切な資産を、囲い込みという悪習からしっかりと守り抜き、最高条件での売却を勝ち取ってください。
関連する記事


